"忘れられない脳"に対し、支援者は?

「忘れることができる」というのは、本当に素晴らしい能力だと思います。
もし経験したすべての嫌なこと、辛いことを覚えていたら、とてもつらくて毎日過ごすことができなくなる・・・。
人は忘れることによって、前を向くことができるし、次にチャレンジする気持ちを持つことができると思います。

しかし、その「忘れること」が自閉症の人たちは苦手です。
自閉症の人たちの脳は、記憶することが得意な反面、忘れることが難しい、といった特徴を持っています。
ですから、嫌なことや辛かったこと、中には特定の人や事柄に対する恨みをずっと持ち続けている方たちもいます。

将来の自立的な生活や豊かな人生を送るための技能の獲得や勉強、支援は大切だと考えています。
でも、さらに過去のマイナスな経験や感情を断ち切り、乗り越えるためのサポートも同じくらい大切だと考えています。
その支援は、忘れることが苦手な人に「忘れなさい」というような方法ではなく、具体的にどのような方法だと乗り越えていけるか、を本人と共に考え、実践していくような方法で。

周囲の人たちが本人の持つ特別なニーズに気づかず、また合わせた支援を行わなかったことによって生まれるマイナスな感情もあるでしょう。
でも、どんなに周囲の理解が得られ、本人に合った支援を行われてきたと言っても、人生の中で嫌なことや辛いことがまったくなかった、と言える自閉症の人もいないと思います。
ですから、自閉症の人たちが持つ「忘れられない脳」に対する支援を考え、深めていくことが、これからの支援者に求められる力、専門性だと考えています。

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