欲しかった福祉サービス、既にあった福祉サービス

学生時代に学んだ発達心理学。
子どもがどのように運動、言語、遊び、認知などの面で成長していくのか。
文字や言葉で一通り学んでいたというものの、実際に息子が生まれ、子育てをしていく中で、やっと真の学びになったような気がしています。
「私たち親が子どもを育てていると同時に、子どもが私たちを親に育てている」
子どもを抱き上げた瞬間に親になるのではなく、徐々に親になっていくのだと、日々の子育ての中で実感しています。

私は仕事を通して、子どもの年代が異なる保護者の方たちと、幅広くお話しさせていただいております。
その中で、世代間で保護者の方たちの考え方や様子が異なっていることに気が付きます。
単純に表現すると、子どもの年齢が高い保護者の方ほど、自分で子どもの支援を考え、実践している傾向があります。
反対に、子どもの年齢が低い保護者の方ほど、自閉症や療育に関する知識は豊富なのですが、自分で何か作ったり、実践したりすることが少ない傾向がある、と感じています。
その背景には、私も含め、今の若い親の世代に余裕がないことがあると思います。
しかし、私が考える一番の要因は、地域の福祉サービスの量が関係している、ということです。

函館もここ10年くらいで、やっと障害を持った子どもたちが放課後や休日など利用できる場所が増えてきました。
それ以前ですと、学生や学校の先生たちが行うボランティアが中心でした。
この地域で10年以上前に子育てを行っていた世代の保護者の方たちは、福祉サービスを利用したくても、ほとんど選択肢はなく、そのため、学校以外の生活の大半は保護者の方たちが子どもたちと過ごしていました。
そのため、苦労は多かったと思いますが、子どもと向き合う時間が長かった分、子どものことをよく知ることができ、保護者の方自身で支援の道具を作ったり、いろいろなことを家庭でも教えたりしていました。
実際に、今の高等部より上の世代の保護者の方たちとお話しすると、子どもが小さいときから、いろいろなことに取り組んできた様子がわかり、また子どもさん自身のことをよく理解されていると感じます。

子どもの年齢が低い世代の保護者の方たちは、初めから地域に利用できる福祉サービスがあります。
それは10年以上前、障害を持った子どもを家庭で抱え込まざるを得なかったお母さんたちからすると、本当に恵まれていると感じますし、これからも利用できるサービスが増えていってもらいたいと私も考えています。
しかし、その分、若い世代の保護者の方たちは気をつけないといけないと思います。
それは子どもが福祉サービスを利用する時間が増えるということは、子どもと接する時間が減る、ということです。
子どもと接する時間が減れば、目の前にいる子どものことを知る機会が減ります。
そのため子どもに関する情報は、学校や福祉サービスの職員さんが行う評価が中心になります。
ということは、どのような教育や福祉サービスを子どもが利用しているかが、子どもの今と未来の姿を大きく左右させるということにもなりかねません。

子どもが学校を卒業したら、どうなるのでしょうか。
地域の福祉の現状を考えると、成人した子どもの生活の大部分は家族が支えていくことになります。
そんなとき、学校や福祉サービスの職員の話や紙面だけでは、実際の支援を行っていくことは難しいと思います。
ですから、自閉症の知識だけでなく、我が子についても知る機会を大切にしてもらいたいです。
子どもを育てると同時に、子どもから育てられることも大事だと考えています。
学校の先生や福祉サービスの職員と同じように、保護者の方たちも子どもの成長を担う大切な支援者です。
「やらざるを得なかった」という状況もありますが、子育ての先輩たちから学ぶことは多いと感じています。

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