2014年4月18日金曜日

「失敗経験をさせない」という意味

「成功体験を積み重ねる」
「失敗体験をさせない」
は、今や自閉症支援の常識となっています。
でも、この言葉を知っていて実践している支援者の中にも、その理由をよく理解していない人もいます。

よくある誤解が「成功させる=良い教育」という視点です。
 「失敗ばかりしていると、本人が傷ついてしまう。やる気もなくなるし、苦手意識だって持ってしまう。だから、その活動が楽しいと感じて、やる気を持って学習してもらうために、レベルを調節して成功体験を積み重ねるようにしていこう」

そして、もう一つの誤解が「自閉症=失敗が多い」という視点です。
「自閉症の人は、人間関係でトラブルを起こすことが多く、コミュニケーションも苦手だし、変化にも弱い。だから、どうしても失敗することが多いから、なるべく失敗させないように教育していこう」

人は誰でも失敗をします。
それは自閉症の人でも、定型発達の人でも同じです。
圧倒的に自閉症の人の方が、定型発達の人よりも失敗をしている、とは言い切れないと思います。
むしろ自閉症の人の中には、周囲から見たら失敗しているように見えることも、自分では気が付いていないこともあると思います。
では、なぜ「成功体験を積み重ねる」「失敗経験をさせない」ということが、自閉症支援の常識となっているのでしょうか。
それは自閉症の人たちの持つ"記憶の特性"が関係しています。

自閉症の人たちは記憶力が優れていると言われています。
また、"忘れられないことが障害"という人もいます。
つまり、自閉症の人たちは記憶が大変優れているため、過去のことも鮮明に、しっかりと覚えている場合が多くあります。

私たち定型発達の人なら、"忘れる"ということを通して、過去の嫌なこと、失敗を記憶の外に追いやることができます。
だから、同じ失敗を繰り返す(笑)
でも、自閉症の人たちは"忘れる"ことができないため、過去の嫌なこと、失敗を現在進行形で向き合っている場合があります。
そんな状態ですと、ずっと「自分は失敗ばかりしている」「自分はダメな人間だ」というように、マイナスな感情ばかりが溢れてしまい、どうしても自己肯定感が乏しくなってしまいます。

自閉症の人でも、定型発達の人でも、失敗する回数に大差はない。
でも、忘れることができない自閉症の人たちは、その失敗1つ1つが大きな意味を持ち、いつまで経っても辛い思いをしてしまう。
このような特性がありますので、なるべく失敗経験をさせずに、成功体験を積み重ねましょう、ということになっています。
ですから、本人の側にいて、正しい行動を導き、教えられる支援者が、小さいときから必要なのです。

*ちなみに、過去の経験を客観的に分析し、今後の行動に活かしていこう、というようなことが苦手という実行機能の特性との関係からも上記のように述べられます。

最高の褒め言葉

今週、また「てらっこ塾で働きたい!」と言ってくれる方と出会いました。
この言葉は私にとって最高の褒め言葉です。
だって、その方は自閉症の特性を持っている人だから。
「とっても柔軟で、自分たち側に立っていて、そして身近に感じる支援サービス」という点が、当事者の方たちに伝わっていることはとても嬉しい。
まだまだ開業2年目の小さな企業なのに、いろいろな方から「てらっこ塾で働きたい」と言われることがあります。
でも、やっぱり嬉しいのが当事者の方たちから「働きたい」という言葉が聞けたときです。

当事者の方で「働きたい」と言ってくれる人の共通点として、「自分が子どもの頃、こんなサービスを使いたかった」「こんな人が側にいて、いつでも相談や手助けをしてほしかった」という気持ちがある場合が多いです。
裏を返せば、それだけ辛い思いや経験をしながら、今日まで過ごしてきたことが垣間見られます。
学校や家庭でのトラブル、日常生活のすべてに関してサポートが必要だったわけではないけれど、やっぱり日々の生活の中で感じる"生きづらさ"を一緒に解決してほしかった。
このような思いも伝わってくることがあります。

「働きたい」と言ってくれる当事者の方に理由を尋ねてみると、「こんな支援がしたい」「こんなサービスを作りたい」という答えが返ってきます。
深く深く掘り下げて尋ねていくと、やっぱり最後は「ずっとこんなサポートがあったら良いのに、と思っていたから」という理由にたどり着きます。

お金を稼いで生活する仕事として成り立つのか?
ピアカウンセラーとして"共感"はできるが、"療育"はできるのか?
保護者の方へのサポート、支援者同士の調整ができるのか?
など、当事者の方が当事者の方を支援するといった場合、このような疑問が投げかけられることが多くあります。
でも、私は本人の"自閉症の人たちと支援を通して関わっていきたい"という気持ちを大切にしようと考えています。

本人ができること、得意なことを活かしてもらえば良いと思います。
生業としては成り立たないかもしれないけれど、支援、サービスを提供し、少額でもお金を得ることは可能だと思います。

今は無理ですけれど、将来的には当事者の方たちをスタッフとして迎え入れられたら、と思っています。
そして、当事者の方だからこそ気が付く視点やサービスを私の方がたくさん教えてもらいたいと思っています。

2014年4月16日水曜日

「好きなこと」と「仕事」は別なのか?

当事者の方から就職について相談を受けることがあります。
「自分にはどんな仕事が向いているのか?」というような相談の場合には、その方の興味があること、また得意なこと、心地良いことなどから一緒に考えるようにしています。
しかし、「自分は〇〇という仕事がしたい」と明確な目標を持っている方からの相談の場合、私は悩むことがあります。
希望している仕事がその方の持っているスキルを活かせるものであれば、何も悩むことはありません。
でも、中にはその方の興味関心とは合っている仕事ではありますが、スキルに注目した場合、苦手な部分や難しい部分がある、と考えられるときには悩んでしまいます。

当事者の方たちに「やりたいことと仕事は違う」ということを明確に伝えるべきだ、とおっしゃる専門家の方たちは多くいます。
支援者の中にも、「あなたは〇〇が苦手じゃない?」「休まずにその仕事を続けられるの?」などと言って、現実に目を向けさせようとする人もいます。
確かに当事者の方の中には、自分の興味関心に注目がいっており、客観的に自分の持っているスキルと仕事で求められるスキルとの比較ができていないこともあります。
しかし、だからといって「あなたの希望している仕事は無理ですよ」などというようなことは、私には言えません。

自閉症支援の基本は、彼らの"興味関心を活かす"ということです。
興味関心があることに対して、強力で、持続的な注意を向けることができます。
また興味関心があること自体が、強力な動機づけにもなります。
このことは自閉症の人たちの強みであり、仕事に関しても活かすべき特徴であると考えています。

また支援者や専門家の意見でその方の仕事、進路が左右されて良いのか、という点に疑問があります。
どんな仕事であっても、自分の得意なスキルばかりで成り立つ仕事はないと思います。
どんな仕事の中にも自分の得意なスキルを用いる部分もあれば、苦手なスキルを用いる部分もあります。
いくら周囲が「その仕事は無理」と思っていても、実際に働いてみたらうまくいったりすることもあると思います。
働く前から、「その仕事が向いているかどうかなんて誰にもわからない」というのが、私の考えです。

その方が持っている「この仕事がやりたい」という思いを否定することよりも、「こんな仕事がありますよ」というように提案し、少しでもその思いを活かせるような支援を行っていきたいと私は考えています。

2014年4月12日土曜日

共通する部分から本人の"クセ"を見抜く

新しい出会いの時期。
私も仕事を通して、新しい出会いが増えています。
そんな新しい出会いのきっかけは、保護者の方からの依頼がほとんどです。
「〇〇ができないので、できるようになってほしい」
「〇〇という行動に困っている」

私の仕事の場合は、特定の技能の獲得や特定の行動の軽減など、依頼が具体的で、どうすれば良いのかが明確です。
でも、最初にその本人と会うときには、あまり依頼された部分のみに注目し過ぎないようにしています。

この前来た依頼は「片づけられないことをどうにかしてほしい」というものでした。
部屋の中に入ると、お世辞にもきれいな部屋とは言えませんでした。
保護者の方の依頼もそうですし、本人の部屋の状態もそう。
部屋の片づけ方の学習をする必要があることは明確でしたが、すぐに片付けの学習はやりませんでした。

もちろん"いきなり学習"というよりも"人間関係を築く"必要がある、という理由もあります。
でも、それだけではなく、学習を始める前に、本人の"クセ"を見抜く必要があるからです。
自閉症の人たちは、同じ"自閉症"という特性を持っていますが、その表れ方は一人ひとり異なっており、個人差が大きいと言われています。
ですから、まず初めに、その本人だけが持っている捉え方や学習の仕方、注意の向け方、興味関心について知る必要があります。

本人に片づけについて尋ねてみると、本人は片付けの必要性を理解しており、実際に片付けも定期的に行っていました。
しかし、時間が経つと、元の場所に片づけなかったり、そのままにしておいたりして、どんどん部屋が汚れていくとのことでした。
ここまでの情報だけで支援を進めると、「一日の中で片付けの時間を作ろう」とか、「わかりやすいように棚に片づける物のラベルを貼ろう」という具合に、『THE自閉症支援』みたいなことしかできません。

ですから、私は他にも家での様子、学校での様子などについても尋ねました。
そのような会話を行っていく中で、
「洗濯洗剤をめもりに合わせて入れようとして、めもりから少ないときは良いが、めもりから少しでも多くなってしまうと、面倒に思えて量に関係なく洗剤を入れてしまう」
「お小遣いを計画的に使おうと月の始めはしているが、中旬頃になると、気が付いたら全部使っている」
「友だちと会話しているときも、最初は丁寧にまとめて話ができるものの、途中からイライラしてぶっきら棒な言い方をしてしまう」
というような状況がわかりました。

これらの話に共通していることは、「手順が増えてくると、思考や行動を止めようとする」ことです。
ですから、この方を支援するとき、頭に入れておかなければならないことは「とにかくシンプルに」ということです。
例えば教科書類なら、今は机から離れた棚の中に片づけられていますが、これでは教科書を持って、机に行き、勉強したあと、再び机から離れた棚まで行く必要があります。
これだと、途中で「面倒くさい」という気持ちが起き、そのまま机の上に置きっぱなしになる可能性が高いと思われます。
実際に、勉強に使ったと思われる教科書や参考書類は、机の上や床に散乱していました。
でも、使っていない過去の教科書や参考書はきちんと棚の中に片づけられていました。

ですから、この場合、勉強に関係するものは机の側に配置することが良いと考えられます。
「準備→移動→勉強→移動→片づけ」という手順を、「準備→勉強→片づけ」というようにシンプルな手順に変えます。
使う物と場所を一緒にすることで、「次することは何だっけ」というような思考の回数を減らし、直感的に行動できるような部屋の配置にすることが、結果的に部屋が片づけられることにつながると考えられます。

基本的な自閉症支援の押さえは重要ですが、その基本に深みを持たせるには、やはり本人の"クセ"を見抜くことだと考えています。
そのためにも、様々な角度から本人の話や行動を聞き、共通する部分から本人の"クセ"を見抜くことが大切になってきます。

2014年4月11日金曜日

新学期は落ち着かないのが普通!?

毎年、この時期になると、違和感を感じる会話があります。
「新学期が始まったばかりだから、落ち着かないのは仕方がないよね〜」という会話。

確かにいろいろな変化があるこの時期は、変化が苦手な自閉症の人たちにとって大変な時期だと思います。
でも、だからといって「落ち着かないことが普通だ」みたいな発言には疑問を持ってしまいます。

予期しない突然の変化だったら仕方がないでしょう。
でも、新学期が来るのは、ずっと前から分かっている事実です。
しかも、この変化は毎年やってきます。
ということは、変化が苦手だという特性だから仕方がないのではなく、端的に言えば、支援する側の準備不足以外の何ものでもありません。

支援者が交代するときの引き継ぎはきちんと行われていたのか。
その引き継ぎはただの文章だけの形式的なものではなく、本人の特性から学習スタイル、過去の取り組みまできちんと情報の共有ができていたのか。
本人に対して、事前にその人がわかる形で変更があること、また具体的にはどんな変更があるのかをきちんと伝えていたのか。
そして一番重要なことが、変更があったときに対応できる支援の手だてがあり、その使い方、対処の仕方まで日頃から学習することができていたのか。

「支援者が替わるんだから、大きな影響が出て、落ち着かなくなるのは当たり前だろう」というようなことを思われる方がいるかもしれません。
でも、別の捉え方をすると、支援者が変わって落ち着かなくなるということは、その前の支援者の影響を大きく受けていた証拠とも言えます。

同じ支援者が一生側にいることはありません。
変更がない世の中はありません。
目指すべき本来の姿は、支援者が替わろうとも「自分で今、求められている活動を理解し、そして独りで実行できる」ことです。
このようなきちんとした支援の方向性で療育を受けている自閉症の人たちは、支援者が替わろうとも、新年度がこようとも、まったく動じず、日々の生活を送ることができています。
私の知っている自閉症の人たちの中にも、このような人は多くいます。

4月は「"ふりだし"に戻る月ではなく、"前に進む"月に」と強く思う毎年のこの時期です。

2014年4月4日金曜日

就労支援、あなたはどっちの考え方?

将来の就労に関して心配されている親御さんは多く、「学校を卒業後、働くにはどのような力を身につけておけば良いですか?」と相談されることがあります。
それに対する私の答えはこうです。
「マニアックな力を身につけましょう!」です。

就職に対する考え方には、大まかに分けると2通りあると思います。
それは「就職口が広がるように、いろいろな技能を身につける」というのと、
「ある一点の技能を深く身につける」というものです。
私の考え方は後者になります。

いろいろな技能を身につけると、就職できる場所が増えていくと思います。
例えば、料理ができるなら飲食店で働ける可能性が出てきますし、レジ打ちができるならコンビニやスーパーなどで働けるかもしれません。
しかし、このような方向性で就労支援を行うには、頭に入れておかないといけないことがあります。
それは「時間」と「ライバルの増加」です。

「時間」というのは、「就職するにはあれも必要。これも必要」というように幅広く技能の獲得を目指すため、時間が足りなくなってしまうということです。
自閉症の人たちは、見たり、聞いたり、想像したりして自然に適切な方法を学ぶことが苦手なため、個別指導が必要になります。
また特別支援学校に通う子どもなら18歳まで、大学や専門学校に通う子どもでも22歳くらいまでに就労に必要な技能を身につける必要があります。
このように限られた時間で、ある程度の技能を身につけておく必要があるので、時間が足りなくなる可能性があります。

「ライバルの増加」は、一言でいうと、「多くの人ができる仕事は、それだけライバルが多くなる」ということです。
現代の厳しい社会では、「同じ仕事ができるなら、自閉症じゃない人を雇おう」と思う経営者が大部分なのが実際のところです。
ですから、あらゆる技能を身につけることは就職口を広げることになるかもしれませんが、それだけライバルが多くなることを意味しています。

私が長年、自閉症の人たちと接して感じることは「一点集中型を活かした就労支援」の有効性です。
自閉症の人たちに「幅広い技能を身につけなさい」というのは、彼らの"好み"には合っていないと思っています。
例え定型発達の人たちが自然にできるようなことができなかったとしても、何か1つでも秀でているものを持っていれば、働くことができると私は考えています。
「とにかくズボンの裾上げなら完璧」でしたら、衣料品店で働くことができるでしょう。
「商品を紙で包ませたら、彼女の右に出る者はいない」というのでしたら、デパートで働けるかもしれません。
「機械の解体なら大の得意」でしたら、リサイクルの仕事もあるでしょう。
「ひよこのオス、メスを瞬時に見分けられる」というのでも、働ける場所は限られますが、誰にでもできるものではありませんので、特定の業種の人たちには重宝される可能性があります。

「コミュニケーションがうまくとれない」
「長く働くことができない」
「1つのことしかできない」
でも、「あることをやらせたら誰にも負けない」という方が、自閉症の人たちの学び方に合っていますし、就職できる可能性が高いと思います。
また、就職したあとも、「これが完璧にこなせるなら、今度はこんな仕事も任せてみるか」ということも現実にはよくあることだと考えられます。

自閉症の人たちに対する就労支援は「マニアックな技能を身につける」というのが私の考え方、方向性です。
このような方向性ですと、限られた時間で、例えば高校3年間でとことんズボンの裾上げだけを練習し、技能を深めていくことも可能になってくると思います。
是非、本人たちの好みを生かしたマニアックな技能を身につけていきましょう!

2014年4月3日木曜日

2年目突入!!

昨日は『世界自閉症啓発デー』でした。また『てらっこ塾』も、めでたく(?)2年目に突入しました!
個人事業で、コネもない状況で始めた『てらっこ塾』ですので、利用してくれる皆さま、応援してくれる皆さまがいなければ、2年目を迎えることはできなかったと思います。
皆さま、本当にありがとうございました!
また、今後ともよろしくお願いします。

今年に入り、新規で利用してくれる方たちが増えてきました。
みなさん、いろいろな"生きづらさ"を感じながら生活されている方ばかりです。
不思議な縁で結ばれた方たちだと思っています。
そんな縁を一つずつ大切にしていきたいです。

4月から函館圏フリースクール「すまいる」の仕事も兼任するようになりました。
スタッフのみなさんから、いろいろな刺激をいただいています。
不登校支援と自閉症支援のコラボレーションが、今後どのような化学反応を起こすか、大変楽しみに思っています。

2年目も謙虚に、貪欲に学び、専門性の向上と視点の幅の広がりを目指していきますので、引き続き応援よろしくお願いします!

「すまいる」の駐車場に車を止めると、正面に函館山が見えます☆