2014年11月6日木曜日

相談に来ない自閉症の人たち

あるスクールカウンセラーの方とお話をして、改めて自閉症の人たちにとって"相談する"ということは難しいんだなと思いました。
学校や生活の中でトラブルがあったとしても、実際に相談に来る人はほとんどいないそうです。
私の仕事の依頼でも、本人からの相談がくる場合はほとんどなく、周囲が本人が困っていることに気が付き、連絡されてくる場合が圧倒的に多いです。

自閉症の人たちが相談にたどり着くには2つの関門を超えなければなりません。
まず1つ目の関門は、「自分が困っていることに気が付く」ということだと思います。
「明らかにあなたは困っていますよね~」というような状況でも、本人が気が付いていないことがあります。

例えば、「友人関係で困っているんじゃない?」と質問しても、「困っていないです」と言ったり、「心配なことはありません」と言ったりします。
「じゃあ、〇〇さんと口論にならずに、仲良く話ができるようになったらいいなと思うんじゃない?」と具体的に聞くと、「そうなんです!」と言ったりします。
自閉症の人たちは言葉を厳密に受け取る傾向がありますし、言葉の概念も一人ひとり違いますので、このように尋ね方にとって受け取り方に違いが出てくることがあります。
困ったことはなくても、改善したいことはある場合があります。

自分自身が困っていることに気が付くには、自分自身を客観的に見る力が求められます。
また周囲の状況を適切に読み取り、事の重大さに気が付く必要もあります。
そして"トラブル"という複雑な要素が絡み合っていて、かつ抽象的な概念を正しく理解しなければなりません。
これらのことは、自閉症の人たちが苦手とする部分と関係しているので、大部分の人がこの第1関門で止まってしまいます。
(本人たちが気が付く"困ったこと"は、目に見えてわかる失敗や具体的な心配事の場合が多いです)

第1関門を通り抜けられたとしても、再び立ちはだかる第2の関門があります。
それは「相談を実行する」ということです。
相談するには、相談相手を決めなければなりません。
そして日時を決め、自分の予定と相手の予定を調整しなければなりません。
相談したあとは、どうなるのか、また、どうするのか、といった点も考える必要があります。
実際に相談に行ったときも、自分の気持ちや困ったこと、どうなりたいか、どのように手伝ってほしいか、などを(それも限られた時間内で)伝えられるコミュニケーションスキルが求められます。
計画を立てて実行することは、自閉症の人たちの苦手とすることであり、コミュニケーションの苦手さも中核的な特性の1つです。

こうして見てみると、私たちが何気なく日常の中でしている"相談"も、自閉症の人たちにとっては自然にできるようになることではなく、相談にたどり着くまでの過程において困難さがあるのだと思います。

長い人生、誰にも相談しないで、自分だけの力で歩んでいくことは難しいといえます。
トラブルに遭遇したとき、"相談する"というスキルが必要になります。
本当は相談したあとの方がメインですので、相談までにたどり着かないことがないように、私たちは小さいときから、相談する意味と期待される結果、相談の仕方、困ったことの表現の仕方などを教え、相談できるスキルを身に付けられるように支援しています。
重大なトラブルではなくても、もしかしたら自分でも気が付いていないトラブルでも、相談したことによって「生きやすくなった!」と感じられる経験を積み重ねてもらうこともとても重要になります。

2 件のコメント:

  1. 先日ある会で「息子が自立したいと言って関東方面で働いているが、職場の理解が得られず 始終どなられてストレスがたまり転職を考えているようだ」という母親がいました。私は「すぐ息子さんの所に行き地元の支援機関とつながりをつけてあげて。自分から支援機関に相談することは難しいから。障がい者には支援が必要」と言いましたが、わかってもらえたかなぁ・・・

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    1. 白崎の母さんへ

      本当に自分から相談できる方は少ないですよね。
      ですから、まずは周りの人が支援者との橋渡しを行うことが良いと思います。
      お話に出てきた息子さんは、今、困っているので、今すぐにサポートが必要ですよね。
      何もされないと、ストレスが減ることはありませんし、悪化する場合もあると思います。
      白崎の母さんのメッセージが届き、行動へとつながってもらえたら、と私も思います!

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