2017年3月29日水曜日

「どうせ福祉だし」

内側から溢れ出る想いを必死に指が追いかけていた。
そんな風に綴ってできたのが、昨日のブログだった。
あっという間の出来事であり、気が付いたら『公開』のボタンを押していた。


一晩経って、その理由に気が付いた。
私は、またあの言葉を聞いてしまったのだ。
そう、この地域に充満していた言葉。
「どうせ福祉だし」


決して口から出てこない言葉。
でも、それぞれの腹の中には存在している。
「どうせ卒業後は福祉だから」
「結局、福祉のお世話になるんだから」


初めて、その言葉を聞いたのは、学生時代、養護学校の補助をしていたときだった。
ボロボロの教材。
いつも同じ活動。
逸脱や問題行動に対処しない教員たち。
「本気で、子ども達の将来を考えて授業をしているのだろうか」
学校に行くたびに思い、大学に戻るたびに、友人と話をしていた。


同じころ、ボランティアで関わっていた子が、休みのたびに当地の大きな施設へ短期入所していた。
まだ小学校に入学したばかりなのに、「高等部を卒業したら、入所施設に入るから」と、そのための練習をしていると言う。
ただの学生だった私には、小学校に入学したばかりの子の12年後の進路が、すでに決まっているかのような話ぶりに違和感があった。


あるとき、私は気が付いた。
学校に行っても、ボランティアで親御さんと会っても、講演会、勉強会に参加しても、「福祉」という言葉が出てくることを。
大学進学で、当地に来た私にとっては、また学生時代まで障害を持った人と意識して関わったことがなかった私にとっては、この地域の文化に気が付いていなかったのだ。


この地域には、古くから施設の存在が近くにあった。
それは物理的にも、心理的にも。
半世紀も前から続き、とても規模の大きい施設。
利用者だけでなく、そこで働く職員もたくさんいる。
この地域に住む人間なら、一度は見聞きしたことのある存在であり、ずっと前からこの地に根付いていた施設。


学校でも、家庭でも、講演会でも、「その施設に入れれば、一生安心」という言葉を幾度となく聞いた。
この地域に住む関係者たちの頭の中には、その施設、福祉という存在があるのだとわかった。
みんな「自立的な生活を」と口では言いながら、身体は施設の方を向いている、そんな感じがした。


大きな福祉施設があることも、必要な方達が利用することも、問題だとは思わない。
しかし、あまりにも施設の存在が大き過ぎて、また身近で、自然過ぎた結果、施設に入ることが当たり前になってしまったことに問題の発端を感じる。
同時に、その施設の元職員として、本当は必要のない人、学び、成長すれば、もっと違う選択肢があった人までも、年代に関わらずどんどん受け入れてしまったことに施設側の過ちがあると思う。


「その施設に入れば、一生安心」という営業トークと治せなかった支援者たち、そして一生懸命学校で教育を受けたり、家庭で子育てされたりしてきた若者たちが、どんどん施設へと入っていた結果が、いつしか「どうせ施設だし」という言葉を生みだしてしまったのだと思う。
この言葉は、支援者から、親御さんから、地域の人達から、熱を奪っていく。


研究の目的も担う養護学校は、普段の授業から熱を奪い、研究のための授業に、つまり己の出世のために熱を使うようになった。
家庭で起きた問題行動も、しつけと言えることも、「私が何とかしなければ」という想いから熱を奪っていった。
地域住民との間でトラブルが起きたとしても、「施設の人」ということで、同じ地域の人間だという熱を奪っていった。


結局、この地域の特別支援に勢いがあった時期は、治せない時代であり、ただ施設内で適応できるための「構造化された支援」がブームになっただけの話である。
でも、今は違う。
治せる時代になり、また福祉以外の選択肢が増えた時代である。
福祉に頼らなくても、自立できる人達、幸せになれる人達が出てきたのだ。
高等部卒業後、作業所に行って、福祉施設に入れば、万々歳という時代ではない。
それなのに当地は、未だに「どうせ施設だし」という言葉が熱を奪い続けている。


教育大の同級生たちは、私を見て、「学生時代と変わらないね」と言う。
私から見れば、学生時代、「あんな教師にはなりたくないね」と話していたあのときの教師と同じ目に、「君たちが変わったんだよ」と思う。


私は今も当地に存在している「どうせ福祉だし」という言葉と闘い続けているのかもしれない、と思った。
関わっている子ども達の通知表、地域の若者たちの進路状況に触れ、福祉に入るための教育、頑張っても、頑張らなくても、結局、みんな行くところは福祉、という現実から、きっと「どうせ福祉だし」という言葉を聞いたのだろう。
「どうせ福祉だし」は、本人から発せられる言葉ではない。

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