ライセンスビジネスが抱える矛盾

私は、有名支援者が「いいですか、日本の皆さん。これからはライセンスの時代ですよぉ~」と言い始めた瞬間、この療法を学ぶ気がなくなったといいますか、熱が一気に冷めました。
まあ、それよりも前から、「支援は“個別化”が基本です!」と言っているのに、どうして何度も、何度も、講座やトレーニングを受けさせようとするのか、わかりませんでした。


ギョーカイ支援者は、お題目を唱えるように、「知識や技能は、常に更新し続けないといけない」と言って、せっせと国や法人のお金で受講していましたが、真新しい情報が出ることはなく、いつも決まって同じ話。
今考えると、ギョーカイ人は仲間内で「参加しない」という抜け駆けを作らないように、お互いを牽制していたのかもしれません。


まあ、それから数年が経ち、本格的にライセンス制度が始まりますと、参勤交代ルールで定期的に講座を受講しなければ、ライセンス取得も、ライセンス継続もできない、というようになり、講座の内容云々よりも、元締めがつくったポイント制という仮想コインをゲットすることが目的になってしまいました。
当人たちが気が付いているのか、どうせ自分の懐からお金を出すわけではないし~と思っているのかはわかりませんが、〇万円する受講料、旅費、接待費(×参勤交代回数)は、元をたどれば、皆さんから集めた税金ですから、日本で働いて納めた税金が欧米の自閉症の人達と支援者のために使われているということにもなります。


まあ、欧米の支援、支援者にお金が流れようとも、それで彼らの生活を日本の私達が支えようとも、日本の自閉症、発達障害の人達のためになれば、問題はないと私も思いますよ。
でも、ここでひっかるのが「個別化」という原理原則。
つまり、何とか療法のやりかた、ルールを学んだあとは、実際に接する人に合わせて個別化するのが基本ということ。
彼らも言う通り、スペクトラムの人たちなのですから、症状も多様であり、常に変化します。
だから、マニュアルなんか作っても意味がないのです、目の前の人に合わせて変えられなければ。


ここまで読んだ方の中には、ピンとこられた人もいらっしゃると思います。
そうです、彼らは矛盾を抱えている。
「スペクトラムの人達」「個別化が大事」と言っている同じ口で、ライセンスが大事と言っているのです。
ライセンスビジネスを成り立たせるには、“枠”が必要になります。
枠がなければ、みんなが好き勝手に「〇〇療法をやっています」と言えちゃうから。
またライセンスを認定する側が受講者に教える際、“型”がなければ、別の言い方をすれば個別化OKにしてしまったら、そもそもライセンス意味なくね~ってなっちゃいます。
個別化で良ければ、わざわざ特定の療法の認定書をもらう必要はないってことになりますし、基礎基本を学べば、あとは個別化しましょう、で良いはずなのです。


こういったギョーカイの姿を見ると、まるで千葉にある東京のようです。
夢の国だったら、多くの人が夢を見られる料金設定にすれば良いはず。
でも、実際はライセンス料が乗っかるから、なんでもかんでも、金額が夢の国になるのです。
園内を歩くキャラクターが有名支援者であり、その周りを囲んで写真を撮って喜んでいるのが、愛を欲している支援者たち。
Facebookなどで、有名支援者を囲んで、いい年齢の大人がみんなでポーズ撮っているのを良く見ますよね。
彼らは夢の国にいるから気が付いていませんが、あれを見た普通の人達は、ただただ引くだけ。
ナントカ療法のライセンス証は、例えるならロゴの入ったパスポートですかね。


支援と言うのは、個別化してナンボです。
特定の療法で、すべてが万々歳ということはありません。
だって、スペクトラムだから。
そう、ギョーカイ人も言っているのに、個別化と相性の悪いライセンスビジネスに熱を上げる。
また、支援の目的は「自立」なのに、同じように彼らも言っているのに、ライセンス制度は、生涯支援者自身を自立させない仕組み。
有名支援者から自立できない支援者に、当事者の方の自立支援ってできますかね?
もっといえば、欧米の元締めから自立できない、お金を持ってこい、と言われ、自立どころか主従関係を結んだ有名支援者に、自立した次世代の支援者を育てることができますかね?


私が、「ライセンス、ライセンス」と騒がしくなってから、ギョーカイの推奨する支援は死んだと思ったのは、彼らが矛盾を抱えているからです。
資格制度、ライセンスビジネスは、「個別化」と「自立」という支援の中核と矛盾する形なのです。
いろんな療法を学ぶのは大事なことですが、原理原則を学べば良いだけのお話。
それ以降は、目の前にいる人に合わせてアレンジする。
そして、支援者から自立できるように、支援者が必要なくなるように支援するのが、真の支援です。
私は、原理原則である「個別化」と「自立」を追及する現実の世界の支援者でいたいと思います。

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