就学時健康診断を受ける前に知っておいてほしいこと

教員になりたての友人が、よく言っていました。
悲しいことに、学校の先生同士の中にも差別意識があるって。
通常級の先生が上で、その次が支援級の先生、最後が支援学校の先生(もちろん、指導力の違い、通常級の先生が優秀で、支援級がそうではない先生ということではないですよ!)。


友人は保守的な地域で教員になったから、そんな風に思う教員もいるのかな、とは思いましたが、それが学校間の異動にも表れていると友人は言います。
通常級の先生が、支援級へ、支援校へ、異動希望を出せばすぐに通る。
だけれど、一度、支援学校に赴任したら、そこから支援級はもちろん、通常級なんてほぼ不可能、と。


そういえば、この友人以外にも、通常級と支援級で先生になりたい人、支援級と支援校で先生になりたい人は、入り口に気を付けないといけない、とみんな話していましたね。
まあ、もう10年以上前のお話なので、当時と状況は変わっていると思いますが…。
今では、センター機能と呼ばれている支援校の先生が、そのノウハウ、専門性を伝えるために、支援級へ異動することも活発になり、その力をいかんなく発揮され、支援級が見事に支援校みたいになっていますしね。


以前にも支援級について書きましたし、昨日も支援級から通常級へということを書きました。
その意図は、就学前にきちんと実態を知り、我が子の選択について考えて欲しいからです。
私の息子もそうですが、翌年の4月に就学する子は、秋頃に就学時健康診断があります。
ここで「発達障害が疑われる」と言われる子が、最近グッと増えた気がするのです。
知り合いの保育士さん達も同じことを言っていました。
ついこの前までは、そんなことは言われなかっただろう、と感じる子までもが、「発達障害の疑い」と言われ、「検査を」「診断を」「支援級へ」となっています。
特別支援という名称に変わったことや、よく耳にする「発達障害」という言葉によって、社会の受け取り方、認識のハードルが下がったからでしょうか。
それともリスク回避のために、早々と支援級を勧めているのでしょうか。
その理由は分かりませんが、どんどん就学時健康診断で引っかかる子が出てきている。


就学時健康診断で引っかかる子の中には、それまで発達障害と思われたり、気づかなかった子が少なくない状況です。
「そのとき(就学時検診)、初めて“発達障害”ということを知りました」と言われる親御さんは、私のところにくる方の中にも多くいるのです。
つまり、何の知識もない状態で、いきなり「発達障害」「特別支援教育」が突き付けられることもあるということ。
まさに丸腰で、特別支援という線路の前に、親子共々、突然立たされる、というようなものなのです。
ショックや悲しみなど、いろんな感情が渦巻く状態の親御さんに、特別支援という線路に「進みません」と言うことも、他の選択肢を選択することも難しい場合があります。
最初から「発達障害」と診断する病院を勧められているのですから、言われるままに検査に行けば、当然、正式な診断名を受け取ることになります。
もうその時点で、特別支援の線路の上を進んでしまっているのです。


冒頭でお話しした学校間の異動のように、支援級から通常級への転籍は、とても大変であり、難しいことなのです。
いくら本人が成長し、通常級で学べる準備が整っても、そちらの方がより良い学びの場になると本人も、親御さんも考え、希望したとしても、途中からというのは大変です。
ただ単純に、本人が成長し、治れば良いというお話ではありません。
そこには、学校という組織と文化、制度と対峙しないといけないのです。


通常級在籍の子が「発達障害の疑いかも」「支援級へ」と言われ、「このまま通常級で学んでいきたいんですけど」という依頼が私のところにきたときは、正直少しホッとします。
しかし、支援級在籍の子の親御さんから「通常級で学べるように支援してほしい」という依頼がきますと、私の身体の丹田に力が入るのです。
この依頼を受けるということは、より強い覚悟と胆力が必要になります。
当然、依頼を受ける私だけではなく、親御さんにも私と同じくらい、いや、それ以上の覚悟と胆力を求められます。


詳しいことは書けませんが、現在進行形で支援級から通常級を目指している方たちもいます。
本人の発達のヌケを育て直すだけでなく、支援級ルールの解毒、勉強する姿勢、足りない分の教科学習などを行う必要がありますし、それだけではなく、学校側へのアプローチもしていかなければならないのです。
何度、通常級から支援級へ行くのは、あっという間なのに、反対はこれほど大変なのか、抵抗に合うのか、と思ったか知れません。


結局、学校に入ってからでは、敷かれた特別支援という線路から降りるのは大変なのです。
多くの親御さんが、「就学前の進路選択のときに戻りたい」と言います。
そして、幼稚園、保育園にいる間に、発達のヌケを埋めておきたかったと言うのです。
ですから、就学時健康診断の前に、こういった事実を知っておいてほしいと思います。
もちろん、私が支援してきた子、見てきた特別支援、当地の様子がすべてではないと思いますが、それに近いことが、全国でまだ繰り返されているかもしれません。


私は、通常級でも、支援級でも、きちんとその子に必要な学校での学びが行われるのであったら、どちらでも構わないと考えます。
でも、どうも支援級の中には、「支援級から通常級へ」という雰囲気が感じられない、より良い学び、選択肢を、という熱が感じられない。
むしろ、できる子は、困難が多い子に合わせ、またお世話係になり、福祉の中でかわいがられる子、適応できる子が目標、目的、理想の子ども像であるように感じてならないのです。


まだ秋までには時間があります。
この数か月間でできることは多々あります。
学校に行って治すより、学校に行く前に治した方が良いです。
お子さんに発達のヌケを感じるのでしたら、そのヌケを育て治す方法があるのです。
全部治せなかったとしても、治りやすいところから治しておく。
そうしておくと、秋の就学時健康診断が違ってくると思います。


明らかに就学時健康診断の様子が変わってきています。
明らかに「発達障害の疑い」と言われる子たちが増えてきています。

『突然の指摘に、迫りくる選択と手続きの中で』というブログは、就学時健康診断で障害を初めて指摘された親御さんと接してきた中で、私が感じたことを書いたものです。

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